FTM カミングアウト 高校生

高校3年の夏。

『男として生きたい。』

僕は、父に言った。
父の表情は険しくなり・・・・口を開いた。

「お前は、一人暮らししろ。
気持ち悪いし・・理解できない。
お前は、レズか・・・・それともバイか!!!
応援できない。勝手にしろ。
お前には、何も期待していない。」

そう吐き捨てた。
カミングアウトの結果なんだろう。

僕は・・・・。
父に会うと・・・発作が起きるようになっていた。
父は、僕を怒鳴り威圧的だ。
きっと父も混乱していたのだろうと、今では思えるけれど
当時は思えるはずもなかった。

僕の胸と脳内が・・・痛む。
拒絶反応なのか?!
僕は、父が近づくと恐怖感なのか全てを喚き散らしていた。
お互いに限界だった。

高校3年生。

こういう形で、僕の『一人暮らし』が始まった。
一人の方が、マシだった。
干渉されず、威圧されない最低限の暮らし。
けれど・・僕の精神状態は不安定のままだった。

自分という生き物がわからなくなってしまった。

僕は孤独感に苛まれる。
夜になると涙が止まらなかったのを覚えている。
人間が信じられない。
けれど、愛されたい。
何も聞きたくない。
ただ静かに、無音の中に居たい。
よく夜風を浴びて外にいた。

高校卒業すると、仕送りはなくなり自力で稼ぐようになる。

あの時、家族は
大学にも行かず、ロクに良い就職もできないお前はバカだと言った。

けれど僕は、

まず自分自身が男として生きることが第一条件であり

他のことは何一つ、本当に何一つ考えられなかった。

つまり、それは生きるか死ぬかぐらいの選択であり

それを否定されてしまい、僕の頭は凄く混乱していた。

何年もの間、

・・・・・もう消えてしまいたいと本気で思っていた。

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あれから月日は経過して、父は僕を認めてくれた。

もしかしたら受け入れたというより、

僕の根気と行動に諦めて認めたのかもしれない。

誰しも、辛く悲しく消えてしまいたい日々があっても

少しずつ未来は変えていけるのだと

やっと僕は感じられている。

久しぶり母(実母)に会った。
面影がない程に痩せ細っていた。
普通に歩くことさえ難しくなっていった母。

既に子宮全摘出しており、幾度も生と死の狭間を彷徨っていたのだった。
母は、末期の子宮ガンに侵されていたのだった。
言葉が出なかった。
僕は母に言った。

『元気になって一緒に住もうよ。』
精一杯の言葉だった・・・。
母は、少し笑った。痛々しい笑顔。
笑った顔を久しぶりに見た。

僕が17歳だった、あの2月11日の夜

・・・・胸騒ぎがした。

誰かが、死ぬ夢。
怖い夢。

僕は、父かと思い声をかけた。

その朝、母は亡くなった。
余命半年と宣告されたが、母は、二年間生きた。

東京から飛行機で福岡へ向かった。

よく晴れていた。

母は冷たかった。
動かない。
動かない。
動かない・・・。
起き上がらない。本当に・・・。

実感が湧かなかった。
一晩、一緒に過ごした。

2月13日・・・母は、僕の目の前で骨になった。
骨となり灰になる 。儚いとは・・この事なのか。

僕の心は、何かがポッカリ抜け落ちた。
夜空は、心地良かった。

母は僕を知らない。

あまりにも早い別れだった。

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■回想

小学4年生になった頃、

暴言・暴力・・

父と母の壮絶喧嘩にも慣れ、
「感情を持たず従う子」になっていた。

その日も父と母の喧嘩は始まった。
僕は、妹と布団に隠れ様子を見ていた。
怒鳴るような叫ぶような声が聞こえる。
馬乗りになり、殴りあっている光景。
意識が遠くなり、僕は静かに目を閉じた。

夜中に包丁を研ぐ母。
血だらけで、笑いながらピアノを弾く。
今でも忘れる事の出来ない深い記憶。

母はストレスで、鬱病だった。
当時の僕は幼すぎて、分からなかった。

台所には、一升瓶が所狭しと並んでいた。

既に・・・
アルコール依存症は始まっていた。

ある晩、また喧嘩になり・・・
僕と妹は母の運転する車に乗せられ
母の実家に連れて行かれた。

母の実家での暮らしが始まった。
約1年間くらいだった。
祖父・祖母は優しく大好きだった。
週末は、車で色々な所に連れて行ってくれた。
母方の祖父は新聞記者で、
よく出かけた時の事を、コラムに書いていた。

結局、実家に帰っても母のアルコール依存は治らなかった。

時間が経てば経つほどに・・・酷くなり
両親にまで暴力を振るう程だった。

母の実家での生活が、1年くらい経過していた。
母は、アルコールの量も暴力・暴言も増えた。
禁酒の誓いなどもしたが、全く駄目だった。
体調も崩し始め点滴を打ちに、病院へ行っていた。

突然、
夕食後「明日は、お父さんに会って遊ぶんだよ。」と言われた。

その日は、よく晴れていた。

小学5年生になった僕、そして妹は、
祖父の運転で2時間かけて福岡タワーまで向かった。
タワーに着くと僕らは、置いていかれた。

その日、玄関で見送る母は・・・泣いていた。

「待ってるから。すぐ会えるよね。」
と小さな声で震えながら、そう言っていた。

僕は、「すぐ帰ってくるから。」と答えた。

あまり、書くような話ではないですが

僕の両親へのカミングアウトとは？？に
焦点をおいて書きました。

僕の家庭環境は、わかりやすくいえば
昼ドラのドロドロした複雑に絡み合う感じです。

お金はあるが、愛はドロドロみたいな。

このカミングアウト以外は、
かなりヘビーダークな感じになるので、
これ以上はやめておきます・・・。苦笑。

僕の過去は、変わりません。

完全には、トラウマも消えません。

けれど、新しい未来を築くことができるし、

過去は過去、未来は未来。

愛と平和。LOVE&PEACE